【精神病における血液脳関門(BBB)】

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    血液脳関門(Brain-Blood Barrier:BBB)の異常は,’沼潅罅き脱髄疾患,てんかん,で知症などの病態生理に関わっている。

     

    ≪BBBの機能≫

    BBBは脳の微小血管と隣接するペリサイト,アストロサイト,ミクログリアなどから形成され,水溶性の物質,分子量の大きな物質,末梢血の免疫細胞が通過できないようにしており,必要な栄養素はGLUT1やLAT1といった取り込みトランスポーターにより輸送され,発現している「P糖タンパク」は様々な物質を外向きに輸送し,脳内の恒常性を保つ役割をしている。

    抗精神病薬などの脂溶性薬剤は拡散により脳内に達するが,P糖タンパクにより排出される。

    実際には,抗精神病薬の多くは取り込みトランスポーターの基質であり,BBBの物質透過性やトランスポーターの発現量は病態によって変化するため,脳内の薬物動態を予想することは困難である。

     

    ≪精神病患者におけるBBBの障害≫

    血液脳関門の障害の指標として最も確立しているものは,「血液と髄液におけるアルブミン濃度の比(QAlb)」である。

    ★QAlbの増加は精神病患者の20%程度で認められる。

    また,初回エピソード統合失調症患者において,カゼインとグルテンに対する抗体の髄液中濃度と血中濃度が相関しており,これは血液脳関門の透過性が亢進していることを示唆している。

    死後脳の所見として,精神病患者では,微小血管内皮細胞のイオントランスポーター,細胞接着,細胞増殖に関係する遺伝子がダウンレギュレーションされていることが示されている。

    しかしながら,こういった変化がBBBの機能とどの程度相関しているかは不明である。

    また,精神病患者においては血管内皮細胞に炎症や免疫機能と関連するタンパク質が多く発現しており,末梢の炎症から脳を保護する細胞が増えている可能性がある。

    他のBBBの障害のマーカーとして,「S100B」が挙げられる。

    S100Bはアストロサイトやオリゴデンドロサイトから分泌され,正常では血中にほとんど検出されないが,BBBが障害されると血中濃度が上昇する。

    精神病患者では,S100Bの濃度が上昇しており,陽性症状及び総合精神病理の尺度,罹病期間と関連していることが示されている。

    近年,グルタミン酸の過剰な放出と精神病との関連が注目されている。グルタミン酸の増加はBBBの透過性を亢進させることが示されており,更に,BBBはグルタミン酸を脳外の間質液に排出する機能を担っているが,統合失調症患者ではこの機能が異常であることが示唆されている。

     

    ≪統合失調症におけるBBBと免疫仮説≫

    精神病患者では血液中のサイトカインが増加しており,脳内のミクログリアが活性化していることが示されている。

    近年,「抗N -メチル-D-アスパラギン酸受容体(NMDAR)抗体」と精神病の関連が注目されている。

    しかし,健常者ではNMDAR自己抗体が脳内にほとんど入らず,しかも,この抗体と精神症状が関連しているのは,BBB障害の代替マーカーである頭部外傷の既往がある患者やアポリポプロテインE4を保有している患者においてのみであることが報告されており,BBBの障害が関与していると考えられる。

     

    ≪治療上の関与≫

    精神病治療の主軸は抗精神病薬治療であるが,患者の1/3は抗精神病薬治療に反応しない。P糖タンパクは薬剤を脳内から排出する役割を持っており,その活性が抗精神病薬に対する治療抵抗性に関与しているかもしれない。

    多くの抗精神病薬はP糖タンパクを阻害する作用があるため,薬剤相互作用の原因となる可能性がある。

     

    〈結論〉

    BBBの異常は.縫紂璽蹈鵑竜’衆枉錙き炎症による透過性の亢進,グルタミン酸のホメオスタシス異常,す垣鎖隻駄抵抗性などを介して,精神病の病因,臨床経過,治療反応などに影響を与えている可能性がある。

     

    POLLAK, T. A., DRNDARSKI, S., STONE, J. M., et al. The Blood-Brain Barrier in Psychosis.  LANCET PSYCHIATRY, 5, 79-92, 2018

    < PSYCHOABSTRACT 2018 No.2 P.7-8石田琢人訳 改変>

     


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